こんばんは、いつのまにか自作キーボード沼に足を突っ込んでいた t-miyajima です。いつもどおりDvorak配列絡みです。せっかくなのでAdvent Calendarに参加してみました。
この記事は、キーボード #2 Advent Calendar 2019 の11日目です。
目次
1.Dvorak配列をオススメしない理由
結論から言うと以下の2点に集約されます。
以下、集約された結論にたどり着くまでに経験した様々な出来事(抜粋)。
- Googleで検索してもiPhoneにBluetoothで接続できるDvorak配列キーボードが見つけられないので時間を浪費してしまう。(時間の無駄)
- iPhoneにBluetoothで接続できるDvorak配列キーボードを見つけたはいいが中国から個人輸入しないといけない。(すごく手間)
- Dvorak配列じゃないと打鍵が遅くなるので、Windowsパソコンを使っている場合にはレジストリをいじらないといけない。(キー配列変更ソフトを使うとPCの動作が少し遅くなるのでなんとなく敬遠)
- 交響曲 と入力するのがすごく大変。(Dvorak配列の場合 こうきょうきょく を入力する際には左手のみ使うことになります)
- キーボードコミュニティ等にいると、Dvorak配列ってなんか中途半端かも、と思ってしまう(実際使ってる人少ない)
1−1.Dvorak配列の物理キーボードがこの世に殆ど存在しない
これからDvorak配列を覚えようとしているそこのあなたにとっては非常に残念なお知らせかも知れませんが、Dvorak配列の物理キーボードはこの世に殆ど存在しません。
少し前(2015年あたり)にはVortex POK3R等Dvorak配列に変更できる有線接続キーボードが出てきたり、ここ最近(2019年あたり)にはVortex Tab60やAnne Pro 2等Dvorak配列に変更できる無線接続キーボードが出てきたりと、多少選択肢は出てきました。
でもね、QWERTY配列使いであれば、折りたたみのBluetoothキーボード(200グラムくらいで超軽い)だったり、40%サイズの自作分割キーボードだったりがいくらでも選び放題。そう、選び放題。
Dvorak配列を使っているだけで、選択肢激減。HD-DVDのプレーヤーを探すようなレベル(わかりにくすぎる喩え)。
え、僕の検索力がなさすぎるだけ? Google先生ならDvorak配列のキーボードをきっともっと見つけてくれるはず?
僕もそう信じて数年生きてきました。
しかし、いくら待ってもGoogle先生が新しいDvorak配列の素晴らしい物理キーボードをその検索結果に載せてくれることはありませんでした。
特にDvorak配列がストレス無く使える40%キーボードなんてね、全然無いの。
うわぁ、これはすごく可愛い45%キーボードだなぁ、欲しいなぁ、と思ってもなんか購入するのがすごく難しいの。
英語で書かれたページ、Sold outと書かれた購入ボタン。
売り切れじゃん、っていう。
負けじと検索して見つけた45%キーボードのBluetooth対応したやつもね、すごく欲しいなぁと思ったんだけど、GroupBuyって書いてあって、もう買えないって。もう買えないの?って英語で書き込んだら、もう買えないよ、って返事が来るの。
え、ならMacとかWindowsとかのレジストリ的なのをいじってDvorak配列で入力できるようにすればいいじゃんって? そうね、それいいね。もろちん僕もそれでこれまでDvorak配列を使っていました。MacだとレジストリいじらなくてもDvorak配列が使えるから本当に便利ですよね。
……iPhone。
iPhoneでDvorak配列の物理キーボード使いたい場合(というかDvorak配列に慣れきっててDvorak配列以外では日本語入力できないっていう僕みたいな人の場合)は、どうすればいいんでしょう。
以前はね、使えたんですよ、ハードウェアキーボードで日本語入力でDvorak配列が。iOS8の頃ね。多分バグだと思うんですけど、折りたたみのBluetoothキーボード(QWERTY配列のやつ)をiPhoneに繋げてDvorak配列で日本語が入力できたんです。
でも、もうできないんです。
iOS9以降はiPhoneに無線で繋がるキーボードでDvorak配列で日本語入力できないんです。
iPhoneでDvorak配列で日本語入力したいなぁ、なんて高望みしなければいいだけの話ではあるんですけどね。
1−2.Dvorak配列よりも効率の良いキー配列が色々ある
Eucalyn配列という素晴らしいキー配列があります。
これはショートカットキーはQWERTY配列から変更せず、日本語の入力効率がDvorak配列よりも良い、というキーボードのキー配列です。
一昔前はDvorak配列よりもEucalyn配列の方が実装難易度は高かったのだと思うのですが、ここ最近というか特にQMKファームウェアを用いた自作キーボードの場合、実装難易度はDvorak配列と同じなので、日本語の入力効率を考えると、どう考えてもEucalyn配列の方が良いです。
なので、今からQWERTY配列以外のキー配列を使いたいと思っている人は、Eucalyn配列等のDvorak配列よりも効率の良いキー配列を是非選んでいただきたい。
今からDvorak配列を学ぶのはあまり良くないのです。
2.(蛇足)Dvorak配列と僕
Dvorak配列を習得し使い始めてからかれこれ10年は経過しようとしています。
それ以前、QWERTY配列で日本語入力していた期間は実質5年程なので、もうDvorak配列を使っている期間の方が倍以上も長いんですね。
そもそもなぜDvorak配列なんて使おうと思ったのか。
学生の頃の僕は、将来はコンピュータ関係の仕事で大量にキータイプする仕事に就くんだろうと思い、腱鞘炎になってしまうと良くないなぁと漠然と思いました。
なら、腱鞘炎になりにくいキー配列を使えばいいじゃないか。
そう思いたち、Googleで色々調べた結果、Dvorak配列を見つけました。
これは素晴らしい。Dvorak博士素晴らしい。なんでQWERTY配列がいまだに存在しているんだろう。Dvorak配列にすべて統一すればいいじゃないか。
Dvorak配列の効率の良さをいろいろな記事から読み取り、僕はDvorak配列を習得しようと決意しました。
習得のため、通学の電車の中でDvorak配列が練習したいと思い、その頃ですら時代遅れだったSigmarion(初代)を購入しました。
Sigmarionを知らない方には驚愕かも知れませんが、Sigmarionは横幅24センチ奥行き13センチ程度の筐体に約70キーを搭載していました。もちろんDvorak配列を使うには申し分のないキー数です。
SigmarionのOSはWindows CEでしたが、なんとキー配列をDvorak配列に変更できるソフトウェアを開発している素晴らしい方がいらっしゃいました。そのソフトを起動した後、再起動すればSigmarionはDvorak配列で日本語入力出来るミニPCになりました。
僕のDvorak配列習得は、このSigmarion+Dvorak配列変更ソフトウェアによって支えられていました。
今でもSigmarionとそのソフトウェアは持っています。特にソフトウェアは二度と手に入らないかも知れないので、大切にバックアップまでしています。
さて……。
Dvorak配列習得後、折に触れてDvorak配列の物理キーボードが欲しいなぁと思うことがあり、その度にGoogleの検索結果に落胆していました。
しかし、たまにはDvorak配列の(比較的手頃な)キーボードを見つけられました。そのうち2つは購入しており、面倒くさがりな本ブログでも特に取り上げてきました。
2016年、Vortex POK3Rを mechanicalkeyboards.com から購入。DIPスイッチでDvorak配列に変更できる60%キーボードです。軸が静音ではなく、静音が好きな僕はシリコンシートやシリコンスプレーを用いて多少静音化を行い、文章を多く打つ時にはこのキーボードを使っていました。
2019年、Anne Pro 2をAliexpressから購入。キー配列がフルカスタマイズ出来て、Bluetooth接続もUSB接続も可能なキーボードです。安かったからかBluetooth対応でケースがプラスチックだからか、音が案外うるさくてほぼ使っていませんが、これは衝撃だった。無線でDvorak配列。ついにiPhoneでDvorak配列で日本語が打てるようになった。素晴らしい。
……でも、持ち運びができない。
いや、出来るけど……60%キーボードより40%キーボードの方が持ち運びしやすいじゃないですか。というか、Googleで無線接続のDvorak配列キーボード探してたら40%キーボードが出てきてとっても魅力的だったんです。だから、40%キーボードのDvorak配列の無線接続のキーボードが欲しいなぁと思うのは至って自然なことじゃないですか。
まぁ、そんなキーボードは存在しないんですけどね(笑)
3.Dvorak志向自作キーボード Dombrick45 について
Dvorak配列を習得してから10年、長い間、見つけにくいものを探し続けてきました。
見つけては購入し、どこか物足りないなと思い、また探す。
人生の目標じゃあるまいし、どうにかしてこんな悪夢から抜け出さないといけない。
2019年、僕はそのきっかけをGoogle先生から教わりました(そもそもGoogleが存在しなければこんなに悩む必要もなかったのかも知れませんが)。
自作キーボードという世界があるよ、と。
これまで人類は存在しないものを創造し続けてきました。
なら僕も、自分の追い求めるものを創造すればいいじゃないか。
そう決意した結果、出来上がったのが自作キーボードのDombrick45です。
Dombrick45の製作には案外時間がかかりました。具体的に言うと1ヶ月くらいかかりました。むしろ1ヶ月でVer.1が完成したのは奇跡かもしれませんが、まだ無線接続も実現していないのに1ヶ月も時間がかかっているんです。無線接続を実現しようと思ったらあと2ヶ月くらいかかるかも知れません。これは大変なことです。
僕は、Dvorak配列にこだわってしまった結果、こんなにも時間を浪費しています。
この記事を書いているのもすべてDvorak配列を使っているせいです。
ああ、Dvorak配列なんて習得しなければ良かった。
……嘘です。Dvorak配列を習得しDvorak配列にこだわった結果、僕は新たな世界に足を踏み入れることができました。
自作キーボードでキー配列を考えている時間はあっという間に過ぎていきます。最初はとても楽しかったのに徐々に辛くなるのもまた趣があり、色々悩んでキー配列を決定した瞬間はとても達成感があったのを覚えています。
PCBを設計している時、Discordの自作キーボードサーバの皆様にアドバイスを頂き、大変うれしかった。自作キーボードの世界にはこんなにも自作キーボードについて色々と考えている先輩がいるんだなと思い、心強く思いました。キー配列1つをとってもいろいろな考え方があり、キーキャップの入手性や基板上に部品を配置・配線する注意点等を学ばせていただきました。PCB設計を終えたときには、本当に自分のキーボードがこれから出来上がるのだ、と実感が湧きました。
PCBと表面実装部品が届き、はんだ付けをしている時は学生時代に戻ったような気持ちでした。日々の仕事は大変だけど、夜、はんだ付けをしている間は心がワクワクして、これから出来上がるキーボードが本当に楽しみでした。
もちろん、ATmega32U4のGNDとVCCをショートさせてしまって、USBとMacを接続してエラーが発生したときには、真っ青になりました。エラーが発生した時には原因が不明でしたので、表面実装部品をあれこれ取り外してみたり、いろいろな場所のハンダを吸い取ったりしてしまいました。ATmega32U4の足のハンダを吸い取りまくってエラーが無くなった時にはあまりの安堵に涙が出そうになりました。
そんなこんなで完成したDombrick45 Ver.1初号機。
Dvorak配列を習得しなかったら、もしかしたら、Dombrick45なんてこの世に存在しなかったかも知れません。QWERTY配列を使っている世界線の僕は分割キーボードあたりを購入して、これで腱鞘炎になりにくくなると満足していたかも知れません。
ですが、Dombrick45はこの世に生まれてきてくれた。こんなにDvorak配列に時間を費やしている僕のもとに生まれてきてくれた。
これは大変素晴らしいことです。
まだまだ無線化やキーキャップの入手性を向上する等、課題はありますが、一旦Ver.1が完成したところで、僕は一旦ある程度満足することにします。
無線化や次期Verはもう少し後で。
ところで、ここまでこんな記事を読んでいただいた方の中で、Dombrick45が欲しいなぁ、と思った方へ朗報です。
現在、遊舎工房様にてDombrick45を委託販売しております。数量が少なかったり、実装難易度が高めだったりと恐縮なのですが、ご興味あるかたは遊舎工房様へ〜。
【キーボード委託】USB mini-B/type-C両対応、最下段ホットスワップ、ネジ0本使用でモビロンバンドとシリコンマットによるマウント、ステンレス2mmボトムプレートと属性盛り盛りな45%キーボード、Dombrick45が入荷です。 pic.twitter.com/l7khaBPoba
— 遊舎工房 (@yushakobo) 2020年4月2日
うん……自作キーボードの宣伝はここまでにして。
Dvorak沼は想像以上に深い沼です。もちろん、キーキャップ沼やキースイッチ沼の方が深いとも思いますが、Dvorak沼は独特な沼だと思います。そもそも人口少ないし。
まだしばらく僕はそんなDvorak沼に沈んでいたいと思います。少なくともDombrick45の無線化が完了するまでくらいは。
この記事は自作キーボードのDombrick45 Ver.1を用いて書きました。